ウォーターサーバーの広告では、よく「天然水だからコーヒーが美味しくなる」と言われます。
焙煎する側から見ると、この説明は半分しか正しくありません。
この記事では、コーヒー目線でウォーターサーバーの利点と限界を整理します。
水道水の塩素は、コーヒーの香りを打ち消します。
ウォーターサーバーの水には塩素が入っていないため、香りが素直に立ちます。
これは実用上いちばん大きい違いです。
なお、汲み置きや浄水器でも塩素は抜けます。
詳しくは「コーヒーに水道水はまずい?カルキの抜き方」をどうぞ。
味を安定させたいとき、変数は少ないほうがいい。
水道水は季節や地域で水質が動きますが、サーバーの水は毎回同じです。
豆や淹れ方を調整して味を追い込みたい人には、この再現性が効きます。
地味ですが、毎日淹れる人にはこれが一番大きいかもしれません。
沸かす時間が要らないぶん、朝の一杯のハードルが下がります。
ただし注意点があります。
サーバーの温水は80〜90℃前後の設定が多く、機種によってはドリップの適温(90〜93℃)にわずかに届きません。
浅煎りをしっかり出したい場合は、温度を確認してください。
温度の話は「ドリップコーヒーのお湯の温度」にまとめています。
スペシャルティコーヒー協会(SCA)が示す抽出用水の基準は、総硬度50〜175 ppmです。
そして40 ppmを下回ると、抽出不足の風味になりやすいとされています。
一方、日本の天然水は軟水です。
ウォーターサーバーで扱われる国内の天然水には、硬度30前後のものが少なくありません。
つまり、銘柄によってはSCAの下限を下回ります。
塩素は抜けて香りは立つのに、味の芯が薄い——ということが起こり得るわけです。
「天然水だからコーヒーに最適」という説明が半分しか正しくない、というのはこの意味です。
コーヒー目的でウォーターサーバーを選ぶなら、判断基準はシンプルです。
硬度はメーカーの公式サイトに水質表示があります。
「天然水」「RO水」という区分ではなく、必ず数字を見てください。
| 向いている | 向いていない | |
|---|---|---|
| コーヒーの頻度 | 毎日2杯以上 | 週に数回 |
| 重視すること | 手間の削減・味の安定 | コストを抑えたい |
| 他の用途 | 料理や飲料にも使う | コーヒーだけ |
コーヒーのためだけに契約するなら、費用対効果は高くありません。
浄水器のほうが安く済みます(「コーヒー用の浄水器の選び方」)。
逆に、家族で水をよく使う・お湯をすぐ使いたい・味を安定させたい—— この3つが揃うなら、選ぶ価値はあります。
ウォーターサーバーの利点は「塩素がない・水質が一定・お湯がすぐ出る」の3つ。
ただし天然水=コーヒーに最適とは限りません。硬度30前後の超軟水はSCA下限を下回ります。
選ぶときは水の区分ではなく硬度50〜100という数字と、温水の温度を確認してください。
コーヒーのためだけなら、浄水器のほうが現実的です。
水の基礎は「コーヒーに合う水の選び方」、 銘柄別の硬度は「コーヒーに合うミネラルウォーター」をどうぞ。