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同じ豆、同じ器具、同じ淹れ方。
なのに、家で淹れたコーヒーが店の味にならない。
その原因、豆でも腕でもなく「水」かもしれません。
コーヒーは98%が水です。その水を変えずに味だけ変えようとするのは、かなり遠回りな話なんです。
先に結論から書きます。
日本の水道水は、コーヒーを淹れる水として基本的に及第点です。
ただし、お住まいの地域によってはミネラルが足りず、味が薄く感じることがあります。
理由はこの後で数字を出して説明します。
まずは「なぜ水で味が変わるのか」から。
水に含まれるカルシウムとマグネシウムは、ただ入っているだけではありません。
この2つのミネラルが、コーヒーの成分を引き出す働きそのものに関わっています。
ミネラルが少なすぎる水は、成分をうまく引き出せません。
逆に多すぎる水は、引き出しすぎてしまいます。
料理でいえば、水そのものが「調味料の一部」になっているようなイメージです。
水に含まれるカルシウムとマグネシウムの量を数値化したものが硬度です。
単位は mg/L(=ppm)で表記されます。
WHO(世界保健機関)の区分では、こうなっています。
日本の水はほとんどが軟水です。
ヨーロッパの水は硬水が多く、これが「向こうのコーヒーは味が違う」と言われる一因になっています。
スペシャルティコーヒー協会(SCA)は、抽出に使う水の基準を数値で公開しています。
主なものがこちらです。
注目してほしいのは総硬度の下限です。
硬度が40 ppmを下回ると、抽出不足の風味になりやすいことが報告されています。
味が薄い、水っぽい、香りが立たない——そういう症状です。
ここからが本題です。
東京大学が2024年に行った全国調査によると、日本の水道水の平均硬度は50.5 mg/Lでした。
SCAの推奨レンジは50〜175 ppm。
つまり日本の水道水は平均で見ると、推奨レンジのちょうど下限あたりに位置しています。
そして地域差があります。
北海道や東北にお住まいの方は、水道水の硬度がSCA基準の下限を割っている可能性があります。
「豆も器具もちゃんとしてるのに、なんか薄い」という感覚には、こういう背景があるかもしれません。
硬度によって、同じ豆でも出てくる味が変わります。
苦味の成分が溶け出しにくいため、まろやかで、酸味が感じられやすい味わいになります。
豆本来の風味や、浅煎りのフルーティーさを楽しみたい場合には向いています。
ただし硬度が低すぎると、前述のとおり味が薄くなります。
成分を多く引き出すため、苦味が際立ち、どっしりとした味わいになります。
深煎りとの相性は悪くありませんが、硬度が高すぎると過抽出になり、雑味やえぐみが出ます。
硬度1500クラスの超硬水(コントレックスなど)は、飲用としては優秀でもコーヒー向きではありません。
コストゼロで、日本の水道水は硬度的にも大きく外れていません。
ただし塩素(カルキ)の匂いが香りを邪魔します。
沸騰させてから少し置く、または汲み置きしておくだけでも塩素は抜けます。
まずはここから試すのが合理的です。
塩素を除去しつつ、ミネラルはある程度残ります。
コストと手間のバランスが良い選択肢です。
ただし製品によってはミネラルまで落としてしまうタイプがあるので、仕様は確認してください。
硬度が明記されているので、狙った数値の水を選べるのが最大の利点です。
主な銘柄の硬度を挙げておきます。
毎日使うとコストはかさみますが、「自分の好みの硬度」を見つける実験には向いています。
毎日コーヒーを淹れる人にとっては、選択肢に入ります。
利点は主に3つです。
ただし正直に書いておきます。
ウォーターサーバーの水が、必ずしもコーヒーに最適な硬度とは限りません。
国内の天然水系サーバーは硬度30前後の軟水が多く、SCAの推奨下限(50)を下回るものもあります。
選ぶときは「天然水だから良い」ではなく、硬度の数値を確認してから決めるのが確実です。
コーヒー目的なら、硬度50〜100程度のものを選びたいところです。
豆を変える前に、水を変えてみてください。
道具を買い足すより、たぶん安くて、たぶん効果が大きいです。